マナティーに恋して、ジュゴンの海へ|ちきゅう研究所を立ち上げたわけ
- むみ きくち
- 1月10日
- 読了時間: 4分
研究者ガイドの調査ツアー:自然の見方が変わる連載①
この連載では、研究者の視点で、自然の魅力をわかりやすく紹介します。
ふだん見逃していた発見に気づくと、いつもの海や景色が少し違って感じられるはずです。
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はじめまして!菊池夢美(きくちむみ)です
ちきゅう研究所(ちきゅうラボ)代表の菊池夢美です。
宮古島を拠点に、エコツアーと環境教育に取り組んでいます。
「研究者」と聞くと、白衣や難しい言葉を想像するかもしれません。
でも私がやっているのは、とても素朴なことです。
フィールドに出て、自分の目で見て、記録して、「なぜだろう?」を大切にする。
そんな“自然の見方”を、みなさんと一緒に楽しみたいと思っています。

すべては、水族館で出会ったマナティーから始まりました
大学生の頃、沖縄美ら海水族館でマナティーに出会って、一目惚れしました。
ゆったり泳ぐ姿、かわいい顔つき、そして「こんな美しい生きものが地球にいるんだ!」という衝撃。
マナティーの水槽の前から動けなくなり、感動でいっぱいになりました。
あの瞬間が、私の人生を大きく変えました。
水族館での出会いをきっかけに、アマゾン川のマナティーの行動研究を研究テーマに選び、博士号を取りました。
その後はメキシコ、ペルー、そしてカメルーンへ。
現地の人たちと一緒に、マナティーの調査や保全プロジェクトに関わってきました。
国内では、美ら海水族館、鳥羽水族館、新屋島水族館と連携して、飼育マナティーの行動研究にも取り組んでいます。
同じ生きものでも、場所や環境が変わると見えてくる課題も変わります。
世界の現場で皆さんと一緒に研究をする中で、「守る」とは何かを考えるようになりました。

「研究だけでは、守れない」と感じた日
世界中のマナティーを見つめてきて、強く感じたことがあります。それは、研究だけでは、守れないということです。
どれだけ論文を書いても、その内容が現場で暮らす人たちや、保全プロジェクトに携わる人たちに届かなければ、状況はなかなか変わりません。
本当に必要なのは、科学的な知識を“わかる言葉”に変えて伝えること。
そして、行動につながるきっかけをつくること。私はそう思うようになりました。
だから、環境教育を始めました
そこで立ち上げたのが、一般社団法人マナティー研究所です。
国内外で環境教育を行い、生きものや自然の魅力、大切さ、人とのつながりを伝えてきました。
そうして、続けるうちにもう一つ気づいたことがあります。
教室の中の話だけでは、どうしても伝えきれないものがあるということです。
自分の目で見て感じること、気づくこと、発見すること、そしてまた新しい謎が生まれること。
こういう体験は、実際に現場に立つからこそ生まれます。

日本に“マナティーはいない”。でも、ジュゴンがいます
日本には野生のマナティーはいません。
けれど、その仲間であるジュゴンが、沖縄の海に生きています!
それなのに、日本ではジュゴンの知名度は低く、知らない人も多くいることがとても残念で仕方ありません。
特に宮古島では、ジュゴンの目撃情報が多いこと、そして海草を食べた跡が見つかることが知られています。
私はこの場所で、ジュゴンや、彼らを取り巻く生きものたちをテーマにして、「海の楽しさ、大切さ」を学ぶ体験を広げていきたいと思いました。
そのために立ち上げたのが、ちきゅう研究所(ちきゅうラボ)です。

ちきゅう研究所のツアーが目指していること
私たちが目指すのは、「楽しかった」で終わらないエコツアーです。
観察して、発見して、また新しい疑問が生まれる。
そんな“調査の視点”を取り入れることで、自然の面白さがぐっと深まります。
たとえば、同じ海でも——
なぜ、この環境にたくさんの生きものが暮らしているのか
なぜ、海にとって海草がたいせつなのか
海草はどんな環境で元気に育つのか
人の活動は、海の生きものにどう影響するのか
なぜジュゴンやウミガメが絶滅しないように守る必要があるのか
こうしたことを考えながら観察、発見をすすめると、いつもの景色が少し違って感じられます。
そして、地域の文化や昔話など、人と生きもの、海の関わりを知ることで、ここ宮古島がみなさんにとっても、もっと大切な場所になるかもしれません。
「知ること」は、むずかしいお勉強ではなく、世界が広がる楽しい体験です。
私はその入口を、皆さんと一緒につくっていきたいです。
次回のブログでは、「なぜ観光ではなく「調査ツアー」なのか」をもう少し具体的にお話しします!
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